契約書の話
契約とは、相反する意思の一致と言われています。例えば、「買いたい」「売りたい」という全く異なる意思が合致することにより売買契約は成立します。これら契約は日常的にどこでも見ることができます。八百屋さんで大根を指差して「これ頂戴!」と言えば、契約の申込みとなりますし、八百屋さんが大根を取上げて「はい、まいど!」と答えれば、契約の承諾ということになり、契約は成立します。お気づきのように、ここでは契約書なるものは存在しません。契約は、一部の例外を除いて、口頭で成立するものです。では、なぜ契約書を作成するのでしょうか?大根の買い物のように、その場で契約内容が履行されて終了するような場合であればともかく、口頭の約束だけでは、契約内容が不明確になり、トラブルの原因になることもありえます。それを回避するために書面に書き残して後々の証拠にすることが契約書の意義です。契約書は、いわばリスク・マネジメントの一環ともいえます。契約を締結する前に、リスク・シミュレーションをして、起こりうるトラブルの種をすべて洗い出しておき、その解決方法を記載しておくべきものです。契約書の最後の条項に「本契約の条項の解釈につき争いがある場合は、甲乙誠意をもって協議し解決に努めるものとする」と記載してある例が多いのですが、このような「争い」が生じないように契約を書面にしたためることが、契約書のあるべき姿です。
契約書の内容や形式は自由に作成してもかまわないのですが、うっかりすると相手方だけに有利な内容、法律で定められた要件を欠いたものになってしまうこともあります。そこで、契約書については専門家に相談して作成するか、契約を締結する前に必ず法的なチェックをする必要があります
。
ここで契約を結ぶときに最低限明らかにしておかなければいけないものを、3項目、挙げておきます。
- .誰と誰の契約か
契約は、誰と誰の間で成立したものかを確定させる必要があります。
- .何についての契約か
その契約の目的、趣旨は何か?賃貸借をするためのものなのか、
債権確保のためのものなのかなどが明瞭に判ることが必要です。
- .どのような内容の契約か
契約の当事者は、どのような権利を取得し、義務を負担するのかが
諸条件を含めてはっきりとしていることが必要です。
契約書の作成
上記の3項目を前提に、実際に契約書を書く前に、当事者間で契約内容を徹底的に詰めておき、相互に疑問などを残さないようにしておくことが大切です。契約書は、その内容を文書にするだけのことです。
契約書を書く上での注意点はいくつもありますが、主なものを以下に書いてみました。
表題の決定
契約書の内容を端的に表現できるなら、その通りに書けばいいでしょう。
例えば、「金銭消費貸借契約書」「不動産売買契約書」などです。
この表題は、法律上は大きな問題ではありませんが、誤った表題をつけず、
「・・・に関する契約書」と書いたほうが良いでしょう。
前文と当事者
誰と誰が、どのような契約をしたかということを簡潔に記載します。
また誰と誰がいう当事者を、出てくるたびにフルネームで書くのも煩雑ですので、 (以下「甲」という)のように略称をつけます。
第1条の書き方
第1条には、契約の目的を書きます。
前文で仮に「貸室賃貸借契約をする」と書かれていても、誰の貸室を誰に貸すの かなどを明記しておきます。
もし、前文にそこまでを含めて書かれていれば目的を省いても差し支えありません。
第2条の書き方
第2条は第1条との関係で決まり、第1条で意を尽くせなかったことを書きます。
例えば「目的物」として、住所・建物名・階数・室番号・坪数などを記載しますが、
第1条で充分な情報が記載されているのに重ねて書く必要はありません。
条件・期限の書き方
契約に条件がある場合は、その条件を明記しておきます。
期限は必ず定めて記載しておきます。
契約の履行期の書き方
契約の履行期は、ビジネス計画にも影響を与えるものです。
また、履行期を守らない場合は債務不履行で契約解除、損害賠償を請求する根拠となりますので、
大切です。
利息・賃料・対価・懈怠約款
金銭消費貸借契約では利息、賃貸借契約では賃料、売買契約は対価など
当事者双方が合意した金額を記載します。
懈怠約款とは、例えば返済が遅れたら遅延損害金が年○%で発生するとか、
代金を支払わない場合は引き渡した商品の返済を請求するとかを書いておく条項です。
費用の負担
契約を履行する際にかかる費用はどうするのかを決めておきます。
例えば、納品の為の運送費用は誰が負担するのかというようなことです。
解除権の留保
契約解除には法定解除、約定解除、合意解除があると書きましたが
ここでは、法定解除は書く必要はありません。ここで書くのは、約定解除の条項で
す。どのような場合に解除権を行使できるかを明記します。
末尾文言の書き方
これは決り文句があり「右の通り契約したので、本書2通を作成し甲乙これに記
名押印の上、各1通これを保管する」のように書きます。
年月日の書き方
契約書作成の日付を記入します。
当事者の書き方
当事者は、会社であれば「社名、代表取締役 ○野○一」とし、個人であれば、
「○○商店こと○山○子」というように「こと」を入れて、個人名を書いてください。
これらに加えて成立日、有効期間を定めて契約の成立はいつか、契約内容は
いつからいつまで拘束力を持つのか等を確定します。
弊研究所では、契約書作成の事前相談、出来上がった契約書の法的チェック、契約書の原案作成、契約の成立・不成立、有効・無効、中途解除等についてのご相談をお受けしています。
内容証明書の話
内容証明とは、内容証明郵便のことです。内容証明郵便とは、いつ、どのような内容で、誰が誰宛に送付したかを郵便局が証明する制度で、主張を相手方に確かに伝えたという証拠となるものです。さらに相手方に到達したことを明らかにするために、配達証明をつけることが必要です。
内容証明書は、クーリングオフの通知、貸し金の返還請求、損害賠償の請求等の当方の主張を相手方に通告したことを証拠として残しておきたいときに利用することが多いのですが、内容証明書を出すということは相手方には宣戦布告と受け取られることがありますが、逆に相手方に心理的な圧力を与える効果がでます
。
貸したお金の返済が滞ってお困りの方、損害賠償の請求をしようとお考えの方、契約解除の通知を出そうとしている方等々、お気軽に弊研究所にご相談ください。内容証明書の書き方、出し方についてご相談に応じております。
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